生命保険は「貯蓄型」か「掛け捨て」か、どちらが良いのか?
生命保険では、昔から貯蓄機能を訴求する商品が多く見られます。
そこには、人々の寿命が延びて高齢化したことで、万が一の死亡時の保険よりも、長生きリスクを重く捉えて、「貯蓄性」を重視するようになったことがあると考えられます。
まず最初の疑問は、そもそも生命保険には加入したほうが良いのでしょうか?
年齢や家族構成にもよりますが、結婚して子供を育てるつもりがある、あるいは子供がいるという人は加入したほうが良いかもしれません。
万一の場合時の家族の将来の一助となるものですから、安心を買うつもりで加入しておいたほうが良いでしょう
逆に、生涯独身を貫くつもりなら、万一を考慮する必要はありません。
また、ライフプランでコントロールできる範囲は拡がるわけですから、生命保険に頼る場面も少なくなります。
次の疑問は、生命保険は「貯蓄型」か「掛け捨て」か、どちらが良いのでしょうか?
この部分に限って言えば、私は「掛け捨て」をお勧めします。
なぜなら「貯蓄型保険」は、「掛け捨て」と「投資信託」の組み合わせに過ぎないからです。
自分自身でコントロールすることができないものに投資するのはおすすめできません。
「貯蓄型保険」は本当に得ですか?
「貯蓄機能」を訴求する保険商品の場合、保険料を毎月支払っているのは、長く支払うほどたくさん貯まっていくと考えているからなのかもしれません。
おそらく、多くの人がそう思っているので、貯蓄型の保険商品は人気があるのでしょう。
保険を売る方も、貯蓄性をアピールすることで、商品が売りやすくなります。
なにしろ、満期の受け取り予想額を提示することで、毎月支払われる保険料がムダに使われていないように見えるからです。
しかし、本当のところ保険の貯蓄機能の実体は、長く保有することで付与される金利がついているにすぎません。
万一の場合の補償にプラスして、満期の際の受取額がより大きな利益を錯覚させているとも言えます。
72の法則をご存知ですか?
「72の法則」というものがあります。
式は以下の通り。<https://ja.wikipedia.org/wiki/72の法則>
年利(単位:%) × 年数(単位:年) = 72.
上記の式の「年利 (%)」に年利率(複利)を当てはめると元本が2倍になるのに必要な年数が求められます。
式を組み替えると「72 ÷ 金利(%) = 元本が倍になる年数」となります。
あなたの生命保険の契約書を確認してみましょう。
予定利率というものが書かれていませんか?
ひとまず金利を7%として計算してみましょう。
バブルのころでもこんな高金利は見られなかったのですが、計算がしやすいので…
「72÷7(%)≒10年」となりますから、10年で倍、20年で4倍、30年で8倍となる計算です。
つまり、一時払保険で考えれば、100万円払い込めば、10年で200万円、20年で400万円、30年で800万円になったのです。
そうであれば、仮に手数料を半分の50万円取られたとしても、10年で100万円、20年で200万円、30年で400万円となるので、契約者は4倍に増えたと喜んだのです。
でも、金利が1%に下がると倍になるのに72年、0.1%だと720年、0.01%だと7200年もかかります。
いくら長寿社会といっても保険期間としては無理がありますね。
つまり、ゼロ金利やマイナス金利の時代には、保険に「貯蓄機能」を期待することはできないのです。
その保険の手数料を知っていますか?
たしかに毎月コツコツ、一定の金額を納めていくと、満期が来ればそれなりのまとまったお金になります。
たとえば、銀行の定期積金のような元本保証商品であれば、1万円を毎月積み立てると1年後には12万円に、わずかではありますが利息も付きます。
「貯蓄」という言葉から、保険商品にもそれと同じ機能があると思ってしまいがちですが、保険商品は違うのです。
生命保険料は、保険金や給付金などの支払いの財源となる「純保険料」(製造原価)と、保険会社が事業を営むうえで必要な費用に充てられる「付加保険料」の2つから成り立っています。
仮に毎月支払っている保険料のうち、付加保険料が1割、純保険料が9割とすると、毎月1万円の保険料を納めていても、実際の支払いや保険金の積み立てに充てられる費用は9000円にすぎないということになります。
つまり、1年間で10万8000円。銀行の定期預金よりも1万2000円も少ない計算になるのです。
生命保険の貯蓄額は、満期受取額と予定利率から計算できますが、あなたの積立額は一体いくらになっているでしょうか?
保険は、多くの人が一部の人を支える仕組み
保険商品の本来の機能は「保障」です。
たとえば死亡保険では、あなたが納めた保険料はあなた自身のために使われることはありません。
保険会社が投資などで運用し、利益を上げるために使われ、ほかの加入者がなくなったときに保障として支払われます。
では、自分自身が死亡したときはどうなるのか…
それはあなた以外の誰かが納めた保険料や保険会社の投資などで上げた利益が充当されるのです。
そのことが理解できれば、保険商品に貯蓄性はあまり重要ではないことがわかるはずです。
特にゼロ金利やマイナス金利のもとではそうです。
保障と投資を分離して考えるとわかりやすくなります。
保障にかかる費用がいくらなのか?
投資額はいくらで、リターンはいくらなのか?
結論をいえば、保険商品の保障部分は本来、「掛け捨て」なのです。
プラス元本保証の投資が追加されているにすぎません。
そう考えると、投資額がいくらなのかを確認して、リターンが有利なのか不利なのかを確認することが重要だということがわかります。
なにしろ、保険期間中は現金化できない長期固定融資なわけです。