公的年金の損得について考える
公的年金は破綻するとか、年金を払い続けるのは損だとか言われていますが、本当にそうなのでしょうか?
公的年金の損得について考えてみましょう。
公的年金は長生きに備えるための保険
老後は年金が大切な生活の支えになります。
公的年金は長生きに備えるための保険ですから、長生きするほど受取額は大きくなります。
受給年齢の変更などで、年金の損益分岐点は、年々伸びているために損得で考えると損をしているように感じられますが、一説によると、平均寿命以上の生存率は60%を超えています。
長生き自体がリスクとなっている状況と言えなくもありませんが、健康で長生きできると言うのは理想的な人生であると言う考えは多くの人が持っています。
死んでしまったら損も得もありません
ですから、公的年金に関して言えば損得を考えることは、あまり意味がありません。
なぜかと言うと、公的年金の本質は長生きリスクに備える「保険」だからです。
本来、保険は自動車事故や病気で働けなくなったり、死んだ場合の家族の生活保障です。
予測することができない事態で、自分の蓄えではフォローできない事態に備えるのが保険の役割になります。
もし、契約期間中に何も起こらなかったなら、支払った保険料は損になるでしょう。
逆に極端なことをいえば、生命保険に加入してすぐ死亡すれば大もうけです。
ほとんど保険料を払っていないのに、保険金が全額受け取れるからです。
でも、そんなことを考える人がいるでしょうか?
いくら大金がもらえたとしても、死んでしまったら損も得もありません。
年金も同じことです。
所得にもよりますが、年金保険料を20歳から払い続け、年金を65歳から受け取る場合、計算上は76歳辺りが損益分岐点です。
損得だけを考えれば76歳以降に死ねば得ということになりますが、これも死んでしまえば損も得もないでしょう。
もとより、自分がいつ死ぬかは予測不能です。
つまり年金は「寿命」という予測不能なものに対して、備えるのが本来的な役割なのです。
も言う一度言いますが、年金は万が一の長生きリスクに対する備えです。
長生きするのは基本的に喜ばしいことですから、万が一という言葉は不適切に思われるかもしれませんが、老後に長生きしてお金がなくなることほど怖いことはありません。
その点、公的年金は終身、つまり死ぬまで受け取ることができるのです。
生きているうちにお金がなくなってしまうリスクに備えるための保険、それが公的年金なのです。
老齢年金の受給は早い方が得か遅らせる方が得か?
さて、年金の受け取りを早くするのと遅らせるのとではどっちが得なのでしょうか。
公的年金には年金の受け取り開始を本来の65歳から60歳に早めたり、逆に70歳まで遅らせたりする仕組みがあります。
これについて、一様に「どちらが損でどちらが得なのか」という点はどうなのでしょうか?
端的にいうと、受け取りを早めれば年金は減額され、遅らせると増額されます。
例えば、現在は60歳から年金を受け取ることができますが、ずっと長生きした場合は、65歳からもらう人に比べて3割も受取額が少なくなります。
一方、70歳から年金をもらう場合は、4割も多くなります。
その点では、早めにもらうのは損ということになります。
年金の受給はライフスタイルに応じて柔軟に考えましょう
それぞれのライフスタイルによって受け取り開始の時期は変わってしかるべきです。
自分は働けるのか、健康はどうなのか、老後はどう過ごしたいのかといった個々の条件に応じてじっくり決めればいいのです。
長生きというリスクに備えるには、元気なうちは働いて稼ぐのが一番のお勧めです。
働けるのであればその収入で生活費を賄い、それができなくなったときに年金を活用するというのが合理的な考え方ではないでしょうか。
そう言った意味では、リタイア後も「働く」という選択肢の他に、インカムゲインやキャピタルゲインといった投資収入なども含めて、長生きのリスクを複合的にフォローする体制は重要になってきます。
公的年金は継続してこそ意味がある
何れにしても、公的年金は継続して払い込んで行かないと受給資格が得られません。
受給資格の要件は緩和されましたが、最低10年、つまり120ヶ月で最低限の受給資格が得られますが、受け取れる年金はほとんど生活の足しになるレベルではありません。
生活保護の受給要件も引き締められる傾向にあるようですから、年金の受給できる額はできる限り大きくできるように、公的年金はできるだけ長く継続した方が安心できます。
もし、払い込みが難しい状況になったとしても、国民年金の保険料免除・納付猶予制度などを利用して、継続することは大切です。
国民年金 保険料免除・納付猶予制度について