VPSサーバのススメ
VPSとは?
物理サーバ上で仮想サーバを複数設置する技術、つまりVirtual Machineでつくられた、パーソナルユースの仮想サーバのことです。
正式には、virtual private server と呼ばれます。
レンタルサーバでは、サーバ会社の提供する範囲の機能しか使えません。
しかしVPSでは、自分専用のサーバを用意して、使いたいソフトウェアやプログラミング言語をインストールするなど、自分専用にサーバをカスタマイズできるようになります。
機能を絞り込んで、表示速度やレスポンスを高めるもよし、色々詰め込んで高機能サーバを目指すもよし、自分好みのサーバを構築することができます。
もちろん、そのための運用知識も必要になりますが、逆に言えば、それらの知識をフルに活用できるとも言えます。
学んだ知識を実地で確認できる、実践こそ最大の学びを得る機会ともいえるでしょう。
しかし、インターネット上で公開されるサーバですから、不十分な設定ではサーバの乗っ取りや不正利用などのセキュリティ上の問題が生じてしまいます。
きちんとした設定でセキュリティを確保するのはもちろんのこと、セキュリティアップデートや脆弱性に対する情報も常に目を光らせて、こまめに対応しなければいけません。
このように、十分な知識が必要な vps ですが、効率的な運用という点ではこれを上回るのはクラウドサーバーくらいではないでしょうか?
費用を固定化できるという点では、大規模に運用するクラウドサーバへの前段階としてもちょうどいい方法だと思います。
VPSのメリット・デメリット
VPSでは、ユーザーそれぞれに仮想サーバーが割り当てられ、ユーザーは管理者権限を持ってその仮想サーバを自由に操作することができます。
ですから、ユーザーは、自分の好きなOSを選ぶことができます。ユーザーはそれを専有して使用できるので、レンタルサーバーより他のユーザの影響を受けにくくなります。
また、インストールするアプリケーションも自由に選ぶことができるので、自分に必要な最小環境でも、思い切り贅沢な環境でも自由に構築することができます。
しかし、逆に言えば、サーバーを自分で構築し、メンテナンスできるスキルや労力が必要となります。
アプリケーションのインストールからセキュリティアップデートまで自分で行わなければなりません。
ここで、レンタルサーバーしか使ったことがない人がVPSを使うメリットを改めてまとめておきます。
メリット
レンタルサーバーよりもコストパフォーマンスが良い。
レンタルサーバーを使っていて、「表示が遅いしモタモタするけど、これ以上あまりお金かけられないしなぁ…」と思っている人には、VPSは良い選択です。
VPSよりレンタルサーバーの方が価格帯は安いのですが、費用対効果から見ると VPS の方が有利です。
他の契約ユーザーの影響を受けにくい。
レンタルサーバーでは、同じサーバーに同居している他ユーザーのサイトのアクセス量が多くなると、自分のサイトもアクセスしにくい状況に陥ります。
VPSの場合はそういった他サイトの負荷の影響を受けにくくなります。
好きなアプリケーションをインストールできる。
「このレンタルサーバー、Apacheが使われているけど私はnginxを使いたいんだよなぁ」という場合には、好きなアプリケーションや上位のバージョンを自分でインストールできるVPSがおすすめです。
まだ、どのレンタルサーバーもまだ提供を始めていない最新バージョンのアプリケーションを試すこともできます。
デメリット
メールサーバやDBサーバなどの管理も自分でやる必要がある。
メールの送受信やデータベースの構築に必要なアプリケーションをインストールして、設定や管理を自分でしないといけません。
セキュリティに関する高度な知識が要求されますが、G Suiteなど、外部のサーバに割り振るなら問題ありません。
DNSなどの設定を自分でやる必要がある。
外部に公開するサーバアプリがある場合には、MXレコードなど DNSの設定も自分でやる必要があります。
VPSはどのプランを選べばいい?
では次に、VPSのプランについて見ていきましょう。
低スペックから高スペックまでいろいろなスペックのVPSがあります。
- 1vCPU メモリ512MB
- 2vCPU メモリ1GB
- 3vCPU メモリ2GB
- 4vCPU メモリ4GB
- 6vCPU メモリ8GB
自分の公開するサーバの内容に合わせて最適なプランを選択しましょう。
安いからといって貧弱な環境のサーバではアプリケーションの処理が追いつきませんし、無駄に高性能なサーバではサーバの性能が十分に使い切れません。
一般にメモリ512MBのプランですと、WordPressなどphpを使うCMSを構成するには少し心もとないので、メモリ1GBをおすすめします。
(512MBではダメという意味ではなく、1GBの方が性能に余裕があるので安心ということです)
とはいえ、VPSを初めて契約するときにスタートアップとして最適なプランはどれなのかは、判断に迷うところだと思います。
そこで私が考えるおおよその目安を紹介します。
(あくまで独断的な目安ですので、ビジネスで運用するサーバーなら、詳しい人にもアドバイスをもらってよく考えましょう。)
目的 | おすすめプラン |
---|---|
CMSを使わない静的サイトを公開・DBも使わない | 1vCPU メモリ512MB |
中小企業のコーポレートサイトをWordPressで構築 | 2vCPU メモリ1GB |
WordPressのマルチサイト機能などで複数サイトを運営 | 3vCPU メモリ2GB |
商品数数千までのネットショップを運営・ネット広告で集客 | 4vCPU メモリ4GB |
MagentoやCS-Cartなどで大規模なネットショップを構築 | 6vCPU メモリ8GB 以上 |
VPSのOSはどれを選べばいい?
OS(Operating System)とは、パソコンで言うとWindowsやMacOSのように、コンピュータをつかさどる基本ソフトウェアのことです。
Webサーバー用途ならばLinuxやFreeBSDといったOSがよく使われます。
ただしLinuxといっても多様で、さらにいくつかのディストリビューションに分けられます。
今のところ、CENTOSやUbuntu などが主流になっています。
パソコン用OSとサーバー用OSの機能や目的の違いをざっくり説明すると以下のようになります。
OS の特徴
パソコン用OS (Windows、MacOS)
- 毎日電源ON/OFFされるので安定性が最重要ではない。
- 個人で作業したり楽しんだりする目的で使用されるので、グラフィカルな画面があったり、動画を再生できたり音を出せたりする。
- 新しい機能や対応デバイスが増えてどんどん進化する。
サーバー用OS (Linux、FreeBSD)
- 複数のユーザーが使うことを想定しているので、24時間365日、無停止で安定して稼働することが求められる。
- ネットワークを経由して遠隔でアクセスされるのでディスプレイやスピーカーは不要。
- 新しい機能よりも、安定して動き、実績のある古いソフトウェアが好まれる傾向にある。
VPSの契約者は、ホスティング事業者が用意するいくつかのOS・ディストリビューションの中から好きなものを選択することができます。
GUIとCUIの違い
コマンドラインでの操作は、いわゆる「文字だけの黒い画面」を通して行うので、最初は難しく感じると思います。
コマンドの種類も多く覚えるのが大変ですが、自分が入力したコマンドでサーバーを操作できる喜びを知ると、その先に広がるサーバーの可能性を感じることができ楽しくなってくるでしょう。
コマンドライン入力をするためには、Windowsでは、PuTTYというアプリケーションをインストールして接続します。
Macでは、標準搭載されている「ターミナル」を使用します。
サーバー構築にあたって必要な知識
初期状態のVPSにサーバーソフトウェアをインストールし、WordPressが動作するWebサーバーとして構築するには、以下のような知識が今後必要になります。
- Linuxコマンドの理解
- パーミッション(権限)の知識
- Linux上で動くエディタ(vim)の使い方を覚える
- HTTPサーバーApacheのインストール方法、設定
- データベース(MariaDB)のインストール、設定
- セキュリティ、ファイアウォールの知識
- WordPressのインストール
これらの詳しい内容についても別ページで解説していきます。