任意整理の進め方
任意整理
任意整理とは自己破産や個人再生と何が違うのか?
メリットとデメリットを解説します。
任意整理とはなにか
任意整理とは、裁判所による手続きを通さない借金の減額方法です。
司法(裁判所)が絡まず、借金の当事者(貸し手、借り手)同士で話し合って解決するから任意整理というわけです。
整理とは借入金の整理であっで、その返済額を減らして返済可能な状態にすることを目指します。
任意整理では、整理して減額した返済額を、分割で返済できるようになるため、返済の負担が軽くなります。
また、減額の交渉は弁護士や司法書士など法律の専門家が行ってくれるため、債務者の負担は軽いことが特徴です。
裁判所が関与しないため、法廷に出なくてもよい点もメリットです。
忙しい方は、時間をとられないので、任意整理をお勧めします。
まず、任意整理の基礎知識を整理してみます。
自己破産や個人再生との違いについても簡単に触れていきましょう。
任意整理は返済額が減るものの多少の返済は必要
任意整理は借入金の返済が必要です。
返済が必要といっても全額を返済するのでは、整理する意味がありません。
そこで、交渉代理人に債権者との交渉を依頼して、返済可能な範囲まで債務を圧縮することを目指します。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは、自己破産を回避できるということです。
自己破産をしてしまうと
- 職業選択に制限を受ける(警備員、保険代理店など)
- 自宅など生活必需資産が債権者に差し押さえられる
- 以降、自己破産が出来なくなる
などのデメリットがあります。
任意整理は、自己破産によるデメリットを回避しながら、借金を減らすには最善の方法です。
自己破産よりブラックリスト期間が短い
自己破産や任意整理を行うと、金融機関から再び借入れできるようになるまでに時間が必要になります。
その期間をブラックリスト期間と呼びます。
任意整理の場合、自己破産と比べてブラックリスト期間が短くなります。
ちなみに、自己破産の場合は官報情報の保有期間が7年または10年、任意整理は5年です。
この7年または10年の自己破産と5年の任意整理の差が、ブラックリスト期間の違いになります。
任意整理は心理的な負担が軽い
任意整理は、交渉によって返済額の減額を受けるので、債権者との関係は比較的穏便です。
交渉の余地があるということが、任意整理の心理的負担の軽さに繋がります。
自己破産は法廷手続きで、裁判所から一方的に通知するイメージなので、債権者との関係は険悪になる場合が多くなります。
個人再生も給与所得者再生だと問答無用の債務カットなので、対立構造が明確化しやすいといえます。
借金の種類を問わず利用できる
任意整理では、どんなタイプの借入れも、債権者との交渉によって整理できます。
しかし、自己破産は、ギャンブルなどの免責不許可事由が認定された場合は免責されない場合があります。
FXや株式投資などの借金も自己破産が認められにくい性質があるので、任意整理にすることをお勧めします。
利息の支払いが減る
任意整理の場合、最終的に「利息の免除」という形で和解契約を結ぶケースがもっとも多いので、返済額はかなり減ることが期待できます。
ここで免除してもらえる利息は「過去に発生して未払いになっている利息や遅延損害金」だけではなく、「将来的に発生する予定の利息」も含まれます。
つまり、任意整理後には「無利息の借入金」に変更してもらえるということです。
返済するお金がすべて元本の返済に充てることができ、返済期間を大幅に短縮することができます
この利息が無くなる効果は、考える以上に大きく、利息が年率12%として、返済期間を3年とすると36%もの減額になるので、多少弁護士費用を払っても圧倒的に任意整理すべきです。
家や車などの資産を残したまま返済額を減らせる
任意整理は民事上の和解なので、自己破産と違って、整理する債務と返済する債務を選ぶことが出来ます。
自己破産:すべての債権者を平等に扱わなければならない
任意整理:一部の債権者とだけ交渉することが出来る
そのため、債務整理を行っても一部の資産を残すことが出来ます。
資産を残したまま借金を整理できるのは個人再生も同じです。
しかし、個人再生は任意整理と違って裁判所を通さなくていけない仕組みになっています。
また個人再生は借金額が100万円から200万円までの場合、債務整理が不利になってしまうという性質があります。
任意整理のデメリット
デメリットはあまりないのですが、あえて言うなら、返済額の全てがなくなるわけではないという点がデメリットになります。
自己破産や個人再生と比較すると債務の減額効果が低く、ある程度の返済が必要なので、一定の収入が必要になります。
ブラックリスト期間がある
ブラックリスト期間によって、借入れが5年間できなくなります。
この期間は、銀行での借入れも出来ず、クレジットカードも作れません。
もちろん、ローンの審査にも通らないことになります。
ただ、任意整理の対象外にしたカードは使えるので、クレジットカードが全面的に使えなくなるわけではありません。
債権者の同意がなければ成立しない
任意整理は債権者と合意することで成立する制度なので、自分だけで完結することはできません。
そのため、個人再生や自己破産のように、裁判所に認めて貰えば成立する、という単純さがありません。
しかし、裁判所が認めてくれないようなギャンブルの借金なども、債務整理できる面があります。
時間がかかる
任意整理は債権者との交渉に時間がかかります。
しかし、任意整理は専門家(弁護士等)に依頼するため、こうした時間を専門家と一緒に借金の返済計画などを相談する時間に使えば、かえって有意義との考え方もあります。
任意整理の流れ
任意整理の流れは、次のようになります。
- 1.専門家(弁護士等)に依頼
- 任意整理は法律を駆使した高度な交渉であるため、素人である債務者には対応しきれません。
そのため、弁護士や司法書士などの法律の専門家に依頼することになります。 - 2.専門家が介入した旨を債務者に知らせる
- 弁護士等の専門家に依頼したら、弁護士は債権者に受任した旨を知らせます。
これを介入(受任)通知書兼債務調査票の発送と言います。 - 3.債務額の確定
- 弁護士や司法書士が債務者と連絡を取って、債務額を確定します。
金利は利息制限法の基準に沿って計算されますので、それ以上の金利で借入れた場合は、返済額が減額されます。 - 4.過払い金の回収
- 利息制限法を超えた金利で返済済みの金利分、過払い金相当額が減額されます
この金利の再計算は任意整理における大きな武器の一つです。 - 5.和解交渉、和解契約の締結
- 法律の専門家が、債権者と和解交渉を行います。
その結果に基づいて、和解契約が締結され、返済額の減額、返済の分割方法などが確定します。
このようにして、任意整理は進んでいきます。
借金の減額方法として、ぜひ活用してみてください。
借金を返さなくてもよい任意整理がある
任意整理は借金の返済が必要だと述べてきました。
しかし、一部には借金の返済が必要ない形態の任意整理があります。
ただし、弁済を要しない任意整理については、消滅時効の援用や相続放棄など、条件整っている場合だけで、さらに複雑な交渉が必要になります。
任意整理は弁護士を使わず自分でできるか?
ここまで、読んで、任意整理に興味を持った人は、「自分で任意整理やったら、弁護士費用が抑えらるかも」なんて、思うかも知れません。
しかし、自分で債権者と交渉しなくてはいけないという点で、特定調停と同じ問題があります。
特定調停のデメリットと同じで、債権者サイドの弁護士に対応できるだけの知識や交渉能力がないと不利になるだけです。
弁護士に頼めば、受任通知で督促が止まる
また、弁護士が引き受けると受任通知書を債務者に送ります。
この受任通知書を受け取った業者は、借入金の回収を一旦止めなくてはいけません。
債権者間の平等性のためですが、一旦借金返済の催促が止まることは心理的に負担が軽くなります。
実際に削減できる債務が大きいことや、手続きを法律のプロにやってもらえるという安心感を考えれば、弁護士費用は比較的小さな問題だといえるでしょう。